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秩父のラーメン屋 [観光]

先日藤岡を訪ね、地元の人とラーメンについて話をした。藤岡と言えば、ラーメンで町おこしをしていることで知られている。その人の話によれば、ある藤岡のラーメン店の店主は、来店客の6割がおいしいと感じるラーメンを目指していると話しているそうだ。ラーメンというのは、あっさりが好きな人もいればこってりが好きな人もいる。麺も太麺、細麺好みが分かれる。これらをすべて統合させ、来店客100%を満足させるのは不可能なのだという。逆に6割の人がリピーターになってくれれば、経営として成り立つ、それがラーメンと言うものなのだそうだ。非常に興味深い話であった。
その話を受けて考え直せば、秩父のラーメン店もずいぶん個性的である。この小さな町でも人によってひいきのラーメンが異なるのは面白いものだ。
秩父でしか食べられないを謳い文句に、「関東甲信越のエース」を標榜するのは、「珍達そば」である。「珍達そば」は、秩父夜祭で山車が引き上げられる「団子坂」のすぐそばにあるので、地元以外の人でも知っている人は多いだろう。豚肉とねぎをごま油の風味でいためたものが麺の上に乗っている。具はこってりしながら、スープはあっさりしているので、また食べたくなってしまう味に仕上がっている。実は、この「珍達そば」は、横瀬町にもお店がある。しかし、経営は別であり、地元の人も「横瀬派」と「団子坂派」に別れてどっちがおいしいとなどと言っている。団子坂の珍達がストライクゾーンであるという秩父通の観光客の方は、横瀬の珍達を探して食べ比べてみてはいかがだろうか。
昔から評判の2軒と言えば、秩父橋近くの「見晴亭」と国道140号沿いのレストラン「水谷」のラーメンだろう。見晴亭のラーメンは、北関東のオーソドックスなスタイルながら、やや甘みのある一本筋の通ったスープが一度食べたものを魅了する。店主に「ラーメン」を注文すると「うちには、支那蕎麦しかないよ!」と言われてしまう。昔からある店だし、これ以外のメニューもあるが、皆「支那そば」を食べている。そんな店である。最近は、秩父駅前にも支店を出したので、観光客の方でも食べたことのある人も増えたと思うが、ぜひ秩父橋たもとの、秩父の雰囲気一杯の本店も訪れていただきたいと思う。
一方の水谷は、見晴亭とは一線を画す、あっさり系のラーメンである。細麺、煮干系の和風だしで、日本蕎麦の出汁にも似たすっきりとした味わいに仕上がっており、女性に人気が高い。「今日どうしても水谷のラーメンが食べたくなって、行ってきた」なんて話が女性から聞かれることもあり、強固な支持基盤があるのが伺える。
街の中心部「ベスト電器」の駐車場横には、もと巣鴨ラーメンの店主が開業したと評判の「いとう」がある。秩父では、珍しい「背脂系」ラーメンであり、ホープ系のラーメンが好きな人には堪えられない味わいのある仕上がりとなっている。わざわざ遠方から「巣鴨ラーメン」の味を求めて秩父を訪れる人もあるほど、マニアの間では有名なお店のようだ。
最近話題のラーメン店といえば、秩父駅近くの「たつみや」であろう。醤油を厳選し、魚介系の奥深い味わいのあるスープを提供しており人気がある。麺は自家製、スープには化学調味料を使用しないことを方針としており、こだわりが感じられる。店主は全国の人気店のラーメンを研究しており、今後の展開も楽しみである。
このほかにも、評判の店があるが書ききれない。ここに紹介した以外のお気に入りの店がある人も多数いるはずである。この多様性がラーメンというものの魅力である。
「ラーメン」は決まりが無いようでいて、決まりがある不思議な食べ物である。例えば九州では、ラーメン屋で単に「ラーメン」を注文すると、所謂とんこつラーメンが出てくるという。しかし、関東で単に「ラーメン」を注文し、とんこつラーメンが出てきたら、注文していない品が出てきたという感覚を持つはずである。
秩父のような狭い地域でも、多種多様なラーメンがあり、各店が強固な支持基盤を持っている。しかし、それは「秩父で支持されるラーメン」という共通のコンセプトを土台にして出来上がっているものである。たとえば、真冬の夜に御花畑駅へ降り立ち、極寒の「からっ風」が吹きすさぶ中、「珍達」の扉をあけて熱々の「珍達そば」をすすれば、「ああ、これ以上のご馳走はない」と思うはずである。そういう意味では、観光で訪れた街で地元で評判のラーメン店を聞き訪れてみるのも、その地域を知る意外な方法なのかも知れないと思った。





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